矯正歯科専門医 宮島悠旗

直撃インタビュー

直撃インタビュー

歯科矯正のメリットと可能性をもっともっと知ってほしい―――。宮島悠旗氏は、そんな想いを実現させるために、あえてフリーという立場で、矯正歯科医としての治療を行っている。
『矯正歯科をブランド化』することで、日本人の歯と身体を健康に、そして美しく。矯正への熱い想いを宮島氏に伺った。

ご両親も歯科医だそうですね。

ご両親も歯科医だそうですね。

実家は、名古屋にある『みやじま歯科医院』というクリニックです。母が院長、父が矯正歯科医という環境で育ちました。両親から歯科医になりなさい、と言われたことは一度もないのですが、両親がイキイキと仕事をする姿を見ていたからでしょうか。小学校を卒業する頃には、自分も歯医者になろう、と決めていました。

矯正歯科を専門にしたのは、何がきっかけなのでしょう。

歯学部の学生は、5年生になると、歯科で実習を行います。つまり、現場の仕事をじかに知るわけですが、そのときにおもしろいな、と感じたのが矯正歯科、口腔外科、歯周病の分野でした。

矯正は、法律の上では歯科医師の免許があればできる治療です。しかし私は矯正歯科医であり、さらにはハーバード大学・セントルイス大学矯正科教授として教えていた父の姿を見て育っていますから、矯正が簡単にできる治療ではないことを理解していました。また、子どもの頃から母がよく言っていたのですが、保険適用の虫歯治療は、出来る範囲が限られていて、歯科医としてのジレンマが大きい。でも矯正歯科は保険適用外なので、自由がきくし、患者様も自分も納得いく治療ができる。

私自身、やるからには患者様も自分も納得できる理想的な矯正がしたい、という気持ちが強かった。ですから歯学部卒業後は専門機関で学び、現場で矯正の臨床経験を積みました。ようやく矯正歯科の認定医になれたのは、31才のときです。

私が認定をとった頃、もう歯学部の同級生たちは、現場でバリバリ働いていて、開業している友人もいました。しかし、矯正歯科医になるための幅広い学びがあったからこそ今の自分があります。スタートは遅くても、学びと経験にはそれだけの価値があるのです。

日本の矯正歯科治療については、どのようにお考えですか。

一昔前に比べると、矯正もかなり認知されてきてニーズも増していますが、まだまだだと思います。歯並びが悪ければ矯正して当然、という欧米の認識とは雲泥の差があります。

「きれいな歯並び」は、なぜ必要なのでしょう。

ひとつは「見た目」です。かつては八重歯がかわいい、などと言われた時代もありましたが、今は歯並びの悪さをコンプレックスと感じる人が増えてきました。

そしてもうひとつは身体への影響です。歯並びが悪いと、どうしても磨きにくい部分が生じ、虫歯や歯周病になりやすい。虫歯や歯周病のもととなる菌はとても怖いもので、糖尿病や脳出血を引き起こす要因のひとつにもなります。さらに歯並びは噛み合わせにも影響し、発音に弊害が出ることも少なくありません。

成長期に咬み合わせのバランスが悪い状態だと、顎が曲がって成長してしまったり、姿勢が悪くなってしまうこともあり、体の本来の力を発揮できなくなり、集中力も低下します。また、咬み合わせが悪いと、食べ物を咬む能力が低下することで、胃腸への負担が増えて、胃腸炎のリスクも高まることが報告されています。

矯正に限らず、日本人は歯に対する認識が低いんです。欧米では、歯医者に定期的に通ってケアすることが当たり前のこととして定着しています。しかし日本では、歯が痛くなってからようやく歯医者に行きますよね。予防そのものがまだまだ定着していません。 虫歯がひどくなってからでは治療にも時間がかかるし、費用もかかります。治療に通うストレスもあるでしょう。それなら矯正によって歯並びを根本的に治し、定期的にケアしたほうがよほど効率的ですし、健康維持にもつながります。

歯から全身の健康を考えるわけですね。

日本人の平均寿命は長く、世界でも健康的な民族のひとつに数えられています。しかし、日本人の歯の寿命は欧米に比べて決して長くはありません。

先ほどからお話しているように、欧米では歯を健康に保つことが当たり前になっていますので、年をとっても健康な歯を維持している人が多いのです。ところが日本人は、身体は元気でも、歯だけが先にボロボロになってしまう。日本人に歯を健康に保つという認識が根付けば、日本人の平均寿命はもっと長くなりますよ。

そのためにも矯正歯科医の役割は大きい、と。

矯正の必要性を広げていかなくては、と思っています。今の段階では保健適用外ですから、費用はかかりますが、相応の価値がある治療であること、美、健康、アンチエイジング、など、さまざまな角度からたくさんのメリットがあることを、どんどん発信していきたいと考えています。

歯科医師として単に治療するだけではなかなか矯正のメリットは広がりません。「それなら私もやってみよう」と、たくさんの方に思っていただくためには、矯正のよさを発信していくことが大切だと思っています。

矯正への理解、認知度をどんどん高めていくために、たとえばどのようなことを考えていらっしゃいますか。

矯正への理解、認知度をどんどん高めていくために、たとえばどのようなことを考えていらっしゃいますか。

メディアミックスを考えています。モデルや芸能人など、「見た目」が重視される人たちは、美しい歯を意識するようになりました。欧米に比べるとまだまだですが、歯をキレイにする日本の芸能人は着実に増えています。画面や誌面から伝わる変化は、視聴者にとってもひじょうにわかりやすいので、そこから矯正がもっと身近なものであることを伝えていけたらいいな、と考えています。

「キレイになりたい」という気持ちは、「コンプレックスをなくしたい」という気持ちに共通する部分がたくさんあります。矯正によって歯並びをキレイにし、口元に自信を持つことは、自分を変化させるきっかけにもなります。

実は私は、子どものころから手汗がとても気になっていました。コンプレックスというのは、人から見れば「気にしなければいいんじゃない?」という程度のものも多いのですが、当事者はとても気にしています。私の場合は、大学時代に神経ブロックの内視鏡手術を受けて、手汗を治してもらいました。ひとつコンプレックスがなくなっただけで、こんなに気持ちが楽になるなんて、医学って凄いなと、本当に感動したんですね。

歯も私が抱いていたかつての悩みと同じだと思います。私は矯正歯科医になってから、キレイな歯を手に入れた患者様がとても明るくなり、表情や性格までステキに変わっていく様子を何度も見てきました。

治療法も働き方も、独自のスタイルを実践されていますね。

矯正は、器具を歯に装着するので、痛いし、目立つし、時間もかかるというイメージが根強いのですが、今はさまざまな治療法があります。目立たないもの、短期間でできるものもありますし、痛みが生じたときの対処法もあります。短期でできるものであれば、ブライダルや就職活動に向けてのニーズもあるでしょう。

「患者様の努力は最小限に。そして効果は最大に」が、私の治療法のモットー。開業せず、あえてフリーで矯正歯科医を続けているのも、場所に限定されることなく、矯正治療をたくさんの方々に受けていただきたいという強い想いがあるからです。

まだまだ私の挑戦は始まったばかり。これから何ができるのか、新しいスタイルの矯正歯科医としての可能性をどんどん広げていきたいですね。